「口」こそ病気予防の要

がん予防

 腸内細菌のバランスが、全身の健康に深く関わっていることは、今や広く知られるようになった。同時に、口の中の「細菌コントロール」も全身の健康にとって大切だ。

なぜなら、実は口は、消化器系の中で直腸の次に常在菌の多い場所。腸と同様、たくさんの善玉菌や悪玉菌、日和見菌などの常在菌がすんでいる。
(常在菌とは、ヒトの身体に存在する微生物(細菌)のうち、病原性を示さないもの。種類は多種多様でヒトによって異なる。)

体には免疫機能があるため、悪玉菌がいても量が少なければ、通常は大事には至らない。しかし口の中の悪玉菌が多くなった場合、免疫力が低下すると、悪玉菌が増殖し大きなトラブルに発展することがある。そのため、普段から悪玉菌を増やさないようにすることが大切だ。

歯周病から動脈硬化になる

歯周病は放置するとやがて歯の根を支える骨が溶けて、最悪の場合は歯が抜けてしまう怖い病。しかも、歯周病が進行すると「菌血症」という状態に結びつきやすい。

菌血症とは、歯周病菌などの悪い菌や、それらが産生する毒素が血管に入り込み、全身を巡っている状態をいう。

歯周病が進行すると、歯肉にできた傷口から、細菌がいとも簡単に血管へと入り込み、血管内の内皮細胞を傷つけ、そこに定着して炎症を起こす。その結果、アテローム性動脈硬化*になることがあり、血管の老化が進む。さらに、血液中に入り込んだ歯周病菌の毒素により慢性炎症が起こり、全身疾患のもとになることも分かってきている。

*アテローム性動脈硬化:動脈の内膜に粥状の隆起(アテローム)ができ、次第に厚くなることで動脈の内腔が狭くなる。これが破れると血栓が作られ、動脈が完全に塞がってしまうこともある。

また、歯周病の人は糖尿病などの全身疾患が治りくいという。

高齢者の場合、歯周病菌をはじめとする口腔内細菌が気管支から肺に入れば、誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こすこともある。

このように全身の病気は実は、『口から始まっている』。口腔内での悪玉菌の増殖が、いかに危険かをまず理解しよう。

歯周病と関係する全身病

糖尿病、動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞、認知症、骨粗しょう症

がん、誤嚥性肺炎、関節リューマチなど

歯周病菌が動脈硬化を招くしくみ

血管内に侵入した細菌や細菌が持つ毒素が全身を巡る。

↓ ↓ ↓

細菌感染が炎症を引き起こし、
炎症性物質(サイトカイン)が動脈壁を傷つけアテローム性動脈硬化になる。

↓ ↓ ↓

動脈硬化を発症。さらに血管内皮細胞が傷つくと血栓ができ、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まる。

「プラークの放置」は要注意

 健康な歯でも、歯磨きを怠っていると、歯と歯肉の境目にはごくわずかな隙間(歯肉溝)付近にプラークや歯石がたまっていく。プラークは、実は歯周病菌などの細菌の塊だ

このプラークを放置すると、歯周病菌は歯肉溝の奥深くと入り込み、歯周組織を破壊しながらより深い溝の歯周ポケットを作り、炎症を広げていく。歯周ポケットは歯周病菌の格好のすみかとなるわけだ。

そして、歯周病菌によって絶えず炎症が起きていると、歯肉の上皮細胞が壊れ潰瘍ができてしまう。潰瘍は、いわば傷口のようなもの。
歯ぐきから出血があると、歯周病菌は、血液中の鉄分を栄養にして増殖し、毛細血管へと入り込み「菌血症」を引き起こす。

歯周病予防のための歯磨きとは

 口は、栄養の入り口でもあるが、感染症や病気の入り口でもある。
では、どうすれば、歯周病菌をはじめとする悪玉菌の繁殖を阻止できるのか

日ごろの正しい歯磨きが重要となることはいうまでもないが、
歯磨きの要点は次のとおり。

まず、歯ぐきからの出血は、最も分かりやすい歯周病のサイン。このサインを疎かにしてはいかない。

次に、毎食後に歯を磨いていれば、歯周病は進行しないかというと必ずしもそうとは限らない。
単にこまめに磨けばいいというものではない。

 歯磨きで何を取る?というと
歯周病予防の意味で本当に意識して取るべきは細菌であり、歯垢(しこう)だ。

歯周病予防の歯磨きのポイントは、細菌の塊「プラーク(歯垢)」を取り除くことだ。

重要なのは、プラークをしっかりと除去し、悪玉菌を定着・増殖させないことだ。

プラークが残っていると数日で石灰化し始めて歯石となり、通常の歯磨きでは取り除けなくなる。1日に数回磨くうちの1回はプラークを取り除くための「しっかり歯磨き」を実践しよう。

プラーク除去のための正しい歯ブラシの動かし方

正しい歯磨きのターゲットは、プラークとなる。

プラークを放置し歯石になってしまうと、歯ブラシでは取れなくなる。だから、プラークができたばかりのときに、バラバラに壊す必要がある。

歯ブラシに加えて、デンタルフロスや舌ブラシを使って歯と歯の間や舌の上にいる菌を取り除けば、悪玉菌をコントロールできるレベルが格段に上がる。

歯ブラシの動かし方のポイントは以下の2点

  • ポイント1 歯ブラシを歯と歯肉の境目に当てる
    プラークがあるのはその場所のため。歯ブラシを当てる角度は45度ぐらい
  • ポイント2 歯ブラシを細かく動かす
    歯2本分ぐらいの間で、歯ブラシを細かくソフトに震動させる


喫煙や肥満などは歯周病進行を早めるともいわれている。歯磨きの見直しと併せて、生活習慣の見直しも行いたい。

参考:日経Gooday

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